ライトニングユーザ体験:キャロルの生活の一日

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まえがき

本投稿は、Lightning LabsのメンバーBryan Vu氏によるライトニングブログ(投稿日:2018-05-02)より本人の許可を頂き翻訳しました。少しでも多くの方にライトニングについて興味を持っていただき、ライトニングでの決済が広がればと思います。本ブログの原作者Bryan Vu氏にこのような機会をいただき感謝します。


はじまり

このブログの目的は、エンドユーザのライトニングネットワーク体験がどのようになるかの将来像を、ビットコインコミュニティとライトニングユーザーへ贈るものです。ここでは、ライトニングペイが初のキャロルを中心に、またライトニングラボがこのユーザ体験を現実にするために取り組んでいるプロジェクトについて紹介します。今後数ヶ月にわたり、これらのプロジェクト(ルーティング、ウォッチタワー、ニュートリノ、モバイル、バックアップ)の詳細を紹介していきます。


キャロルとの出会い


今回の記事では、キャロルがこの物語の主人公です。彼女は仲の良い、熱心なビットコイナーのアリスからビットコインについて教えてもらい、今日までちょっとした投資家兼ホドラーです。この物語では、「ライトニングペイが技術的に成長し、日常での支払いが始まろうとしているそれほど遠くない将来」という設定です。彼女はライトニングペイの楽しさをまさに今体験しようとしています。


オンボード(搭乗)


最初のステップは、アプリストアでライトニングアプリ*1をインストールしセットアップすることです。ビットコインウォレットをセットアップしたことがある人ならお馴染みの初期設定。まずは、24個のバックアップシード*2が作られるので、キャロルはそれを紙に書いて安全な場所に保管します。このシードは、スマフォを失くした時や壊れた時に復元することができます*3。次に、ビットコイン交換所からビットコインを彼女のスマフォに送金します。この最初の送金は通常のビットコイン送金と同じです。これはキャロルもお馴染みの送金方法なので簡単ですね。


オートパイロット(自動操縦)


残りの初期設定は自動で行われます。先ほど送金したビットコインが承認されるまで(通常のオンチェーン上の送金なので約1時間)、ライトニングアプリはニュートリノプロトコル*4を使ってブロックチェーンを同期します。ニュートリノはスマフォなどの低スペックデバイスでも高度なセキュリティとプライバシーを保ちながらビットコインを使うことを可能にします。そのため、数分で同期が完了します。

ライトニングアプリへのビットコイン送金が承認されれば、オートパイロット*5と呼ばれるシステムが後を引き継ぎ、ビットコインをライトニングネットワークへ移動してくれます。この処理は最長で1時間(いくらデポジットしたかで時間にばらつきがある)で完了しますし、この処理は初期設定の1回限りです。これでキャロルはライトニングペイを使うための準備が整いました!


ショッピングモールにて


ライトニングアプリの設定が完了したので、彼女はちょっとショッピングをしようと決めました。彼女はアルパカウールが大好きで、地元のショッピング街Bloomingblocksにある新作アルパカ靴下に目をつけていました。彼女はこれはライトニングアプリを試す絶好のチャンスだと思い早速購入をします。ショップ店員がRectangle™のライトニングペイ統合型POSシステムを使って、商品決済用のQRコード*6を表示してくれました。キャロルはライトニングアプリを開き、そのQRコードをスキャンすると、その支払い情報が表示されたので、金額が間違っていないかと送金手数料を確かめました(なんと手数料は1円以下!*7)。彼女が確定ボタンをタップすると数秒以内に送金完了画面がPOSシステムに表示され、レシートがキャロルへメールされました。このような感じで、彼女は履き心地の良い新品の靴下と一緒に家に帰ったのでした。


背面下では


キャロルの知る限りでは、ライトニングペイ体験は速くシンプルなものですが、背面下ではちょっとした様々な技術がこの体験を可能にしているのです。


ペイメントチャネル:ライトニングネットワークを作る上での大切なものは、ペイメントチャネルというコンセプトです。これはブロックチェーンのセキュリティを強化させ、速く低コストな取引を可能にします。

スマートコントラクト:ペイメントチャネル配下では、「スマートコントラクト」という形式が使われます。これは資金を移動する上で、暗号学的にセキュリティを保障するものです。第一のライトニングのスマートコントラクトは、ハッシュタイムロックコントラクト(the Hash Time Locked Contract:HTLC)と呼ばれ、ビットコインのブロックチェーン上で施行されます。HTLCはライトニングペイにとって、複数チャネルにわたって(これをマルチホップペイメントと呼びます)送信されることが可能です。ペイメントチャネルとHTLCの詳細はここに記載してあります。

ルーティングノード:上記で述べたとおり、キャロルは1セットのルーティングノード群(デフォルトではオートパイロットは5つのノードとチャネルを開設します)を通してライトニングネットワークに接続しました。ルーティングノードはいつもオンラインであるコンピュータで他のユーザー達へ送金を促します。Bloomingblocksも1セットのノード郡と接続されています。六次の隔たり理論で経路を発見するための処理を通して、キャロルのライトニングアプリは自動的にBloomingblocksとリンクするノードを決定し、そのノードたちを伝って支払いが送信されます。次回のブログではルーティングノード、チャネルバランスそしてルーティングネットワークについての詳細についてご紹介します。

ウォッチタワー:キャロルのライトニングアプリは「ウォッチタワー」と呼ばれるセキュリティシステムを使っています。インターネット接続が数日間ない場合に、キャロルのペイメントチャネルに問題が起きた場合に備えての保護を提供します。もしこの種のネットワークエラーが発生した場合、ウォッチタワーが自動的に復旧作業に入ります。ウォッチタワーの詳細については今後のブログにてご紹介します。

スプライシング:キャロルが支払いたい販売者がまだライトニングペイに対応しておらず、通常のビットコイン決済を受け付けていた場合に、「スプライシング」を使うことができます。これは、ペイメントチャネルを閉塞させずにそのチャネルから通常のビットコインを取り出し決済に当てることを可能にします。スプライシングはオンチェーンとオフチェーンとの取引をシームレスにします。この機能についても今後ご紹介してきます。

AMP(Atomic Multipath Payments):AMPも今後のブログ内容のうちの一つです。AMPは一つの大きな支払い金額を複数の小額へ分割し、それらを別々のペイメントチェネル越しに送信することを可能にします。受信者はこの別々な小額支払いを一つにまとめ、あたかも一つの取引であるかのよう受理または拒否することができます。ユーザーは、この処理は自動で行われるため気づくことはありません。

再度ですが、エンドユーザとしてのキャロルは、ウェブサーフィングをするのに、様々な技術(HTTP,TCP/IP,TLS,BGPなど)を理解する必要がないのと同じ以上に、ライトニングアプリを使うのに、上記のコンセプトを知る必要はありません。


販売者へ


ライトニングペイ統合のメリットの1つに、支払いを受け取るのに手数料がかからないことがあります。販売金額の2~3%をクレジットカード会社へ支払っていた販売者にとって、これはかなりの節約になるでしょう。さらに、ライトニングペイは取り消しができないため、彼らはチャージバックやクレジットカード詐欺にかかる原価損失費や管理費を心配する必要がありません。ライトニングペイでは、販売者がすぐに売上金を手にでき、クレジットカード会社からの支払いに数時間、数日待つ必要はありません。

これらの理由から、私たちは、クレジットカード決済よりもライトニング決済が好まれることを望んでいます。結果的に、販売者の中にはライトニングペイで決済するお客様には割引やポイントなどを提供するようになるかもしれません。


キャロルへ戻って


今キャロルはショッピングから帰宅し、リラックスをしようとしています。熱烈な Legend of Wowcraftプレイヤーである彼女は、次のクエストではギルド仲間の一人がDevout Shouldersという装備が必要であることに気がつきました。そこでLegend of Wowcraftのバーチャルショップで「ライトニングペイ」をクリックしました。

彼女にとって未知であったこのボタンは、実はライトニングペイのリンクをリクエストするものでした。このボタンで、彼女のライトニングアプリの「確定」画面が自動で表示されました。この確定ボタンをタップすると、数秒でLegend of Wowcraftはアイテム装備の支払いを受け取り、彼女とそのギルドは装備を購入し戦闘準備完了となりました!


ライトニングアプリへの補充


その後、モンスターとの戦いと最新ZhouTongedアルバム(キャロルがLighTunesで購入)を何度も聞き入った後、彼女がライトニングアプリをふと見てみると、残高が少なくなってきていることに気がつきました。彼女のお気に入りのビットコイン交換所GenesisTransactionが最近ライトニングネットワークをサポートしたのを思い出したので、試してみようと決めました。ライトニングアプリ内の「資金を追加」ボタンをタップし、チャージしたい分のビットコインを入力し、交換所一覧からGenesisTransactionを選択後、彼女のアカウントを入力しました。これでGenesisTransaction交換所へライトニングペイのリクエストが送信されます。キャロルのスマフォに入っているGenesisTransactionアプリが自動で起動し、確認画面が表示されました。彼女はその取引を確定すると、瞬時にその資金がGenesisTransactionの彼女のアカウントから差し引かれ、ライトニングアプリへチャージされました*8。彼女がよくやっていた通常のビットコイン送金と違い、取引が承認されるのを待つ必要がなく、送金手数料もとても低いのです。

この資金の補充プロセスは、彼女がショッピングモールで靴下を購入した時と似ていますが、ただ処理の流れが逆向きになっただけです。彼女はその処理を知る必要はなく、次回のショッピングやオンラインショップができるようになっただけです。とても簡単に、彼女はライトニングペイのチャージが可能で、給料やオークションで決済、友達との割り勘も可能なのです。

このライトニングペイやライトニングチャージは、高く遅いビットコインのオンチェーン取引なしで、数ヶ月または数年継続できます。一度ライトニングアプリの設定が完了すれば、ビットコインのオンチェーン取引は、ライトニングペイのための資金追加(ライトニングチャージ)やビットコインのネットワークエラーを回復させるためだけに、ほんの少し使われるだけでしょう。


一日の終わり


今日の早期先駆者にとってライトニングはまだ複雑な技術です。lnd 0.4.1-betaを使っているユーザーは、プロトコルおよびペイメントチャネルがどのような仕組みかを理解する必要があります。これは暗号、セキュリティ、ゲーム理論、経済などの分野の知識も関連してきます。ビットコインだけでも複雑ですが、さらに複雑さを増します。しかし、ライトニング技術が成熟してくれば、よりシンプルで直感的で馴染み易くなるようライトニングペイのユーザー体験を改善することができるでしょう。理想的には、キャロルのようなユーザーが背面下の技術を理解する必要なく、預け入れや支払い、残高の管理ができるようになり、そして今存在している決済手段(チェック、クレジットカード、現金など)よりも一層便利で低コストになるでしょう。

このパズルで最も重要な1ピース(lndのプロトコル実装)は、今、ビットコインとライトコインのメインネット(本番環境)上でベータ版です。デスクトップとモバイルのアプリ、ルーティングノード、ウォッチタワーとその他インフラは開発途中です。冒頭で述べたとおり、今後もライトニングネットワークを作りあげるこれらの技術についての詳細を連載していきます。乞うご期待!


脚注

1 私たちは現在、最新版のライトニングアプリ(デスクトップ版)のリリースに向けて取り組んでいます。私たちのアルファ版アプリは廃止予定となっています。モバイル版とデスクトップ版アプリを促進していきます。

2 AEZeed:lndはAEZeedと呼ばれる形式のシードを採用しています。これはバックアップとライトニングチャネルの検索のため開発された機能です。今後の記事で詳細なバックアップと復元がどのような仕組みなのかについてご紹介します。

3 ライトニングチャネルの復元のためのAEZeedでは、新規チャネルが開設される時に作られる「静的」バックアップと、取引が行われるときに更新される「動的」バックアップからできています。最初は少なくとも、ウォッチタワー機能としてバックアップを実装する予定です。

4 ニュートリノの詳細はBIP157,BIP158そしてNetrino Github repoで見ることができます。

5 オートパイロットはルーティングノード群(特に稼働時間と支払いの信頼性を重視し選択される)と接続し、そしてこれらのノードとペイメントチェネルを開設します。デフォルトでは、5つのチャネルが開設され、もし1つのノードがオフラインになり、かつ・または、オンチェーン取引を経由して復元するための資金が必要となった場合、80%の資金はまだ利用可能な状態になるでしょう。これにはキャロルがする必要のない詳細があります。彼女が知っていることは、彼女のお金はすぐにライトニングペイで使用可能で、ライトニングペイでお金を送金することができます。

6 現在、多くのスマフォにはNFCが搭載されおらず、そのためQRコードがビットコイン決済の主流となています。しかし、私たちはNFCがこのワークフローをいっそうシンプルなものにすると予想しています。

7 ライトニングの手数料は、通常のオンチェーンのビットコイン取引よりもかなり低いです。オンチェーン取引では数万または数十万のコンピュータが伝送、検証、保管に関わっている一方で、ライトニング取引は少数のコンピュータしか関わっていません。ライトニング取引を処理するためのリソースコストはとても低いため、手数料もそれに応じて低いのです(我々の計算では1円以下です)。

8 現在、このプロセスはコピー&ペーストが必要ですが、交換所がライトニングをサポートすれば、この例のように自動化が可能となるでしょう。

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